#4 テキストの利用-タイトル/テロップ作成

 前回紹介したトランジションやビデオFXといったエフェクトは映像の見栄えをよくするために積極的に使いたい機能だが、より重要な役目を果たす機能もある。それがテキストだ。

 ビデオ編集でテキストの利用というと、タイトルの作成がまず思い浮かぶことだろう。たとえば、旅行の映像であれば旅行先の地名や日時などを入れ込むのが一般的だろうか。もちろん、旅行となれば一カ所だけでなく、複数の土地での映像が残る。移動時の映像なども残したいところだ。映像作品としては、それらの地名を随所に盛り込んでいくのが望ましい。また、時間経過も盛り込んでいけばより臨場感のある作品となるはずだ。映像だけではわかりにくい「状況説明」をテキストで補うというのが最も効果的な使い方だろう。

 映像をわかりやすく伝えるためにテキストの果たす役割は大きい。エフェクトで得られる見栄えの良さだけでなく、わかりやすさもビデオ編集作業で演出しようというわけである。

■テキストの設定

 Movie Studioでテキストを使うための操作は、これまで紹介したビデオクリップやトランジション、ビデオFXと同じ。マルチファンクションエリアで「テキストと背景」タブを選択し、ここからプリセットのサムネイルをタイムライン上にドラッグ&ドロップしていくだけである。プリセットには「カラーグラデーション」「クレジットロール」「テキスト」「単色」というカテゴリに分けられているが、ここではまず「テキスト」を見てもらいたい。

 「テキストと背景」タブという名称だけあって、単色の背景付きのプリセットもあるが、背景が透明なものがやはり最も基本になるだろう。サムネイルの背景がグレーのチェッカー模様になっているものを選べば、背景となる映像の上に文字が浮かぶということになる。もちろん、文字を前面に出すにはタイムラインでの配置は、下に映像、その上にテキストにならなければならない。たとえば、映像を「ビデオ」トラック、テキストを「ビデオオーバーレイ」トラックに、という具合だ。

 さて、いつもならそれぞれのプリセットを使って作成した映像を設定とともに画面写真で紹介するところだが、今回は付録DVDにムービーファイルを収録している。実際の映像で効果を確認してもらおうという趣向だ。

 まずはフォルダのファイルを見ていただこう。いずれのプリセットも短い時間での収録だが、Movie Studioのテキスト機能の概要をつかんでもらえるはずだ。わかりやすいようにプリセット名を画面下に入れているが、ここで注目してほしいのは画面中央の文字「Digital Video」の方である。

 最初の「デフォルトテキスト」は文字にまったく修飾がないもの。シンプルといえばシンプルだが、背景の映像によってはとても見にくいものになることが想像できるだろう。

 次の「ソフトシャドウ」は文字に影がついたことで、背景との境界がはっきりしている。背景の映像に白い部分があっても、白い文字が使える、これがシャドウの効果である。

 さらに「ヘビーアウトライン」ではより境界線が太くなっている。確かに文字は読みやすくなるが、いささかやりすぎの感もある。状況説明用には向かないが、最初のタイトル画面にならいいかな、といったところだろう。

 続く「透明テキスト」はこれまでとは逆。文字の部部に背景映像が透けて見えるというものである。これもタイトル用といった雰囲気だが、時間経過や場所の移動を演出するために、場面転換の際に挟み込むことも可能だろう。

 サンプルムービーはさらに続くのだが、ここでひとまず小休止。ここまでの効果の設定方法を見ていくことにしよう。

 最初の「デフォルトテキスト」はマルチファンクションエリアの「テキストと背景」タブの中にあるプリセットをそのまま使ったもので、文字列のみ変更してある。変更方法は例によってタイムライン上に配置したクリップの右下「FX」ボタンを押して、プロパティウィンドウを表示させればいい。

 ここでのタブは4つ。「編集」タブで文字列およびサイズのほか、ボールド(太字)、イタリック(斜体)、文字揃えが設定できる。

 次の「ソフトシャドウ」もマルチファンクションエリアに用意されているのだが、今回のサンプル作成では別の方法で設定している。先の「デフォルトテキスト」を繰り返しコピーした後、プロパティウィンドウ内の「プリセット」ドロップダウンリストで選び直しているのだ。得られる結果はドラッグ&ドロップと同じだが、似たような効果を繰り返し使うにはこちらの方が手っ取り早いのである。うまく使い分けたい。

 「デフォルトテキスト」と「ソフトシャドウ」で変わった点は「エフェクト」タブで確認できる。「シャドウの描画」にチェックボックスが入っているのだ。

 この「エフェクト」タブには先に述べた背景との境界をはっきりさせるための効果が用意されている。シャドウの効果はサンプルムービーで見てもらったとおり。フェザーでぼかし具合が、オフセットの設定で影をどの方向に落とすかが決められる。色の選択も可能なので、文字色や背景映像に合わせて選択しよう。

 その上のアウトラインは文字どおり境界線を加えるもので、同じくフェザーと色、そして線の幅が設定できる。アウトラインはシャドウよりも境界がはっきりするのでよりよいと思われがちだが、実際の使用時には注意が必要だ。輝度が極端に異なるピクセルが隣接する場合、PCではきれいに見えても、TVの映像ではちらつきが発生する場合があるからだ。文字の大きさや線幅によって常に出るというわけではないので、さほど気にする必要はないが、TVに出力した時点でちらつきが気になったらここを見直せばよいだろう。編集作業時にDVカメラ経由でビデオ出力しながら常に確認できればよいのだが、残念ながらMovie Studioにはその機能がない。

 次の「透明テキスト」は「プロパティ」タブで違いがわかる。ここではテキストの色と背景色を個別に指定できるのだが、テキストの色が透明で、背景色が青になっているのである。ここではさらにトラッキングで文字間、リーディングで行間、スケーリングで拡大率が指定可能だ。どうも文字列が間延びしているな、と感じたらここを調整すればいい。低価格ソフトではこのへんがいまひとつなのだが、Movie Studioはしっかり調整できるのである。

 これらに加えて、文字の変形も可能となっている。文字を曲線状に配置したり、上下をつぶしたりといった効果が得られる。派手なタイトル作成にはもってこいの機能である。

 ただ、残念ながら、1クリップで使える文字属性が1つという欠点もある。異なる大きさの文字を1画面に入れ込みたいとなったら、複数トラックを使うか、別途レタッチソフトなどで、タイトル画像を作るしかない。アルファチャンネルを持った画像なら、背景を透けさせることは可能だ。

■文字に動きをつける

 ここまでのテキストは静止したままだったが、これを動かしたい場合はどうすればいいだろう? 本連載の熱心な読者なら前回紹介したパン&クロップの利用がすぐに思いつくところだろう。移動の軌跡を直線ではあるが簡単につけられるので、クレジットロールなども余裕でこなせそうである。しかし、残念ながら1画面の範囲に収まらないような何行にも渡るクレジットロールはパン&クロップではできないのである。よって、ここでは「テキストと背景」に用意されたプリセットの「クレジットロール」のカテゴリを利用することになる。

 サンプルムービーに収録しているのはまず「黒部分でスクロール」である。このカテゴリは、先の静止したテキストとは設定項目が大きく異なっている。まずは文字列を入力する「アイテムテキスト」欄に注目してほしい。

 1行ごとに文字を入力していくのだが、各行に異なる属性を持たせることができるのがこのソフトの珍しくも便利なところである。テキストには、タイトルテキスト、サブアイテムテキスト、そしてアイテム左配置/アイテム右配置という3つの属性がある。

 それぞれの属性について文字サイズやトラッキングなどが設定できるので、どれがタイトル用というわけではなく、便宜上名前がつけられているだけのようだ。使い方としてはタイトルテキストは大きめの文字でそれこそタイトル用、サブアイテムテキストが平文といったところだろうか。最後のアイテム左配置/アイテム右配置というのが独特で、左右個別に文字列を入力し、それぞれが左寄せ/右寄せで表示される。ドラマのエンドロールなら左に役名、右に俳優の名前を出す感じだろう。

 文字の動きとしてはオーソドックスな縦スクロールのほか、エフェクトを「時系列」にすれば、ズームイン/ズームアウト、ワイプイン/ワイプアウト、行単位での横スクロールなどが用意されている。また表示位置も調整できるので、映像に合わせてうまく配置したいところだ。

 実際の動きについてはサンプルムービーを見てほしい。

■カラーグラデーション

 「テキストと背景」タブのカテゴリの中には文字以外のものも用意されているのだが、ちょっと見には使い方がわからないという人も多そうだ。それが「単色」と「カラーグラデーション」だ。「単色」は文字通り1色だけを使ったもので、タイトル画面の背景用といったところだろう。透明度の変更が可能なので、実際に撮影した映像の上に重ねて、簡易カラーフィルターとしての使い方もできるかもしれない。

 もう1つの「カラーグラデーション」もタイトル画面の背景用といった趣だが、映像や文字の組み合わせによってはなかなかおもしろい効果が生み出せる。

 サンプルムービーに収録した「飾り木版」のプリセットは文字を載せるのに最適な効果だろう。プロパティウィンドウでグラデーションのコントロールポイントを調整することで立体的な見た目になるし、色を変えれば木だけでなく金属といった素材の風合いも表現できる。開始/終了点で設定を変えてもおもしろい。

 また、「楕円状」や「長方形」といった画面中央だけが透けて表示されるプリセットでは、回想シーンなどが表現できそうだ。こちらもコントロールポイントの調整で任意の位置、大きさに変更できる。注目させたいポイントだけをそのまま映し、それ以外の部分に色を載せれることも簡単だ。直線的な動きの被写体なら開始/終了点を設定するだけでできる。不規則に動く被写体を追いかけるのは開始/終了点の設定だけでは難しいが、連載第2回で紹介したプリセットのセーブ/ロードを使えば、無理なことではない(いや、確かに面倒ではあるが)。
        ◆
 Movie Studioのテキスト機能はほかの低価格ソフトと比べてさほど強力なものとはいえない。とくにモーションテキストに関しては、1文字ずつフレームインしたりくるくる回って落ちてくるといった複雑で派手な動きをするものがない点が見劣りしてしまう。

 それでも各種装飾機能により文字を見やすくする工夫は存分に盛り込めるし、文字色や背景色を時間経過に沿って変化させるというほかにはあまりない特徴も持っている。これらの機能を組み合わせれば十分見栄えのよいタイトルやテロップが作成可能だろう。また、通常のビデオクリップと同様、クロスフェードがどのトラックでも利用できるし、再生状態でパラメータ変更ができてリアルタイムに効果を確認することができるという利点もある。これが作業効率に大いに影響するのはこれまで述べてきたとおりだ。