#0 Movie Studioレビュー

(本記事は連載の前に単体のレビューとして掲載されたものです)

  SONY PICTURES DIGITAL NETWORKS(以下SPDN)からリリースされたSCREENBLAST MOVIE STUDIOはすべての作業がリアルタイムで行えるという、非常に快適な編集作業を提供してくれるビデオ編集ソフトだ。
 本ソフトを一度触れば、これまでのビデオ編集ソフトがいかにレスポンスが悪かったのか思い知るはずである。

 MOVIE STUDIOの前身は、SONIC FOUNDRY(以下SF)社のVIDEO FACTORYという製品。
 SF社がSPDNに買収されたのを機に新たにコンシューマー向けにSCREENBLASTというブランドが設立され、その第一弾としてMOVIE STUDIOがラインナップされた。
 同ブランドからはACID PROの廉価版であるACID 4.0(旧ACID MUSIC)も同時リリースされている。

 旧SF社は、ACIDやSOUND FORGE(波形編集ソフト)から音楽ソフトメーカーというイメージが強いが、VEGASというプロフェッショナル用ビデオ編集ソフトも擁している。
 VEGASはリアルタイムプレビューがウリで、オーディオ編集にも強いソフトとして知られているが、日本語版がなく、国内ではあまりメジャーとはいえない存在である。
 しかし、このVEGASの廉価版に当たるMOVIE STUDIOは待望の日本語化がなされ、初心者向けソフトからのステップアップにも最適なソフトに仕上がっている。

 MOVIE STUDIOのウィンドウは、画面上部にクリップを配置するトラックウィンドウ、下部の左にクリップを選択するエクスプローラウィンドウ、そして右にプレビューウィンドウという、一見独特の構成となっている。

 各ウィンドウの大きさははドラッグで可変だが、ウィンドウ同士が重なり、下のウィンドウが見えなくなることがないのが秀逸である。

 エクスプローラは、タブの切り替えで、メディアプール、トランジション、ビデオFX、テキストと効果を表示させられる。

 編集の基本はエクスプローラウィンドウからビデオ/音声クリップをトラックにドラッグ&ドロップで並べるというもの。
 エクスプローラを内包することで、利用するクリップを登録するという手順は不要。いったんトラックに配置したクリップは、メディアプールに自動で登録されるので、再利用の際もわざわざフォルダを探す必要はない。

 トランジションやビデオFX(ビデオフィルタ)の適用も同じくドラッグ&ドロップである。
 トラックウィンドウに目を移そう。

 ビデオトラックは3本、上からテキスト、ビデオオーバーレイ、ビデオという名称だが、テキストトラックにビデオクリップを配置しても問題ない。
 上のトラックほど前面に表示されるという構成はPremiereと同じである。

 音声トラックも同じく3本。
 こちらもボイス、ミュージック、サウンドエフェクトとなっているが、ビデオトラックに配置したクリップの音声はすべてボイストラックに収録される。
 複数のビデオクリップが重なる場合は上のトラックが有効となるのが基本である。

 クリップの配置でまず感心したのが、1トラックにクリップを重ねて配置した部分(いわゆるトランジションになる部分)には自動的に映像、音声ともにクロスフェードがかかるところ。
 クロスフェードのカーブの形状もリニア(直線)や放物線状など9種類から選択できる。
 映像の場合はクロスフェードだけでは物足りないので、トランジションを別途選ぶこともできるが、こちらも16カテゴリから合計180種類と豊富に用意されている。
 適用の動作はもちろん、トランジションウィンドウからのドラッグ&ドロップである。

 クリップの編集方法はいたって快適である。
 トリミングはクリップの左右いずれかの端をドラッグするだけ。
 右上または左上を左右にドラッグすればフェードの適用(映像、音声とも)、中央上部を上下にドラッグすれば透明度(映像)、音量の調整が可能だ。

 また、クリップの長さ以上に伸ばす(右端を右にドラッグ)すれば、繰り返し再生となる。
 映像では使いみちがいまひとつ見えないが、音声クリップの場合は、ループサンプル(ACID用ファイルなど)を用いれば簡単にBGMが作成できるのがわかるだろう。
 さすがにACIDのように複数クリップのテンポ合わせ機能までは用意されないが、単一ループを使う分にはほかのビデオ編集ソフトより楽にできるのは間違いない。

 音声編集では上記フェード、音量調整操作のほか、エンベロープを用いた音量、パン(左右の定位)の変化をオートメーションできる。
 ポインタモード変更でポイント追加を行うのだが、ダブルクリックではなくシングルクリックで追加できるのも楽でよい。

 ビデオクリップの拡大・縮小、回転(パン・クロップ)などのモーション機能も利用可能だ。
 クリップの始点・終点で異なる大きさ、位置が指定できる。

 キーフレームの追加はできないが、クリップの分割で工夫すればかなり凝った動きもつけられる。

 タイトルに関してはテキストへの縁取り、シャドウ、変形(上下左右のいずれかををつぶす、水平垂直に圧縮など)といった修飾が施せる。

 また背景色(単一色)の指定も可能だ。
 こちらも始点、終点で異なるパラメータが指定できるので、上記のパン・クロップを組み合わせればより多彩な表現が可能になる。

 また、スクロールのプリセットもスタッフロールに便利な気の利いたパラメータが用意されている。

 こうしたエフェクト処理は動きの確認しつつパラメータを調整するという試行錯誤が必要になるが、それを強力にサポートするのが冒頭のプレビューだ。

 MOVIE STUDIOはビデオ編集ソフトにしては珍しく、指定範囲の繰り返し再生(ループ再生)機能が用意されている。

 エフェクトを施した部分を再生状態にしたまま、パラメータを変更していくことができ、その結果はプレビューウィンドウでリアルタイムで確認できる。
 パラメータ変更のたびに、調整用ウィンドウを閉じて再生、気に入らなかったら再度調整、といった手順は必要ないのである。

 エフェクトだけでなくクリップの編集すべてにおいて再生状態で行えるというのはまるでDAWソフトのような操作感であり、ビデオ編集ソフトではこれまでなかった快適さである。

 限られたページでは書ききれないほど豊富なビデオFX、音声エフェクトも簡単迅速に試せる環境でこそより威力を発揮する。
 リアルタイムプレビュー装備のPremiere Proよりも快適な編集環境がここにはある(トラック数など機能的にはMOVIE STUDIOが劣るのはもちろんだが、あえていわせてもらいたい)。

 1万円台のビデオ編集ソフトに物足りなさを感じているユーザーは、Premiere Proに行く前に本ソフトのデモ版をぜひ試してみてほしい。