#3 エフェクトの利用

 Movie Studioのビデオトラックは3本。いずれも機能には差がない。

 エフェクトの利用も、モーションつけることも、フェード(不透明度の設定)も、同じように適用できる。
 ただ、上のトラックほど前面に表示されるということだけを覚えておけばいい。

 これを前提に今回はエフェクトの機能を見ていくことにしよう。
 ここで取り上げるのは、トランジションとビデオエフェクト、そしてモーションである。

■トランジション

 ビデオ編集の最も基本的なエフェクトは、シーンとシーンをつなぐ場面転換の効果、いわゆるトランジションであろう。

 前回までで紹介したように、同一トラックで2つのクリップを重ね合わせた部分には自動的にクロスフェードのトランジションが適用される。
 フェードにおける変化の度合いをカーブの形状で選択可能な点についても先に触れている。

 クロスフェードおよびトランジションなし、すなわち単なるカットつなぎは最も基本となる場面転換の方法だが、これだけでは寂しいと思うのが人情だろう。
 PCを使ったビデオ編集ではさまざまなトランジションが利用できるので、使ってみない手はない。

 トランジションは、Movie Studioの画面左下、マルチファンクションエリアのトランジションタブで表示されるサムネイルアイコンから選ぶことになる。
 いくつかのカテゴリに分かれているが、その数は合計173と膨大である。
 まずはここからイメージに合ったものを選ぶ作業が必要になる。
 ある程度は名称とサムネイルからあたりがつくだろう。マウスポインタをサムネイル上に持っていくことでアニメーション表示に切り替わるので、実際の動きはこれで確認が可能だ。
 常に全サムネイルがアニメーション表示されているソフトもあるが、これはこれで全体の動作が鈍くなるという弊害がある。
 Movie Studioの仕様は理にかなったものいえるだろう。

 なお、膨大なトランジションの数ではあるが、実際は転換後の映像がフレームインしてくる方向(あるいは元映像がフレームアウトする方向)が違うだけというものも多い。
 カテゴリごとに1つずつ見るだけでも用は足りるだろう。

 適用方法は例に漏れずいたって簡単である。
 タイムライン上のトランジションを適用したい位置、すなわちクリップ同士が重なっている部分に任意のトランジションのアイコンをドラッグするだけでよい。
 この時点で各種パラメータ変更用のウィンドウが開く仕組みだ。

 パラメータの内容はトランジションによって異なる。たとえば、転換後の映像が円を描きながらフレームインしてくる「スパイラル」では回転方向やズーム率、境界線の色やぼかし具合(フェザー)といったパラメータが用意される。
 プリセットも複数用意されるので、まずはこれらを試すのもよいだろう。

 このウィンドウには再生ボタンも用意されるので、即座に効果が確認可能だ。
 再生時にはタイム選択バーがトランジション部分に自動的にフィットされるので、必要ならばメインウィンドウ側の再生ボタンでループ再生をONにすればよい。

 ループ再生させた状態でもパラメータ変更が可能で、即結果が反映されるのは初回で触れたMovie Studioの大きなメリットだ。
 操作方法自体は他のソフトと大差ないが、その後の調整がしやすいというわけだ。

 いったん設定用ウィンドウを閉じた後の再設定についてだが、タイムライン上のトランジション部のアイコン(四角形に斜めの線)をクリックすればいつでも呼び出せる。
 Windowsのデスクトップ解像度が低い場合は邪魔になることも多いので、調整が終わったら閉じたほうが使いやすいだろう。

■ビデオFX

 次は他社製ソフトではビデオフィルタと呼ばれるクリップ単位でのエフェクト。

 Movie Studioのマニュアルでは「ビデオのエフェクト(FX)」と表記されているが、画面上ではビデオFXとなっているので、本稿もこれに従うことにしよう。

 ビデオFXの適用もトランジションと操作方法は同じ。
 マルチファンクションエリアで今度は「ビデオFX」タブを選択、任意のアイコンをタイムライン上のクリップにドラッグすればよい。

 トランジションと異なるのは、1つのビデオクリップに対して最大8つの異なるビデオFXが適用できることだ。

 「明るさとコントラスト」を調整して、さらに「シャープにする」「渦巻き」の効果を加えるといったことができるのだ。

 各種パラメータの変更ができるのはトランジションと同様だが、クリップのイン点・アウト点で異なる数値(または選択肢)を設定できるのがビデオFXのポイントである。

 不透明度はタイムライン上のエンベロープで設定できたが、ビデオFXのパラメータはイン点・アウト点のパラメータを個別に調整するしかないので、効果の確認はプレビュー再生に頼るしかない。
 しかし、何度もいうが調整、プレビューという手順はループ再生により非常に簡単になっている。

 イン点・アウト点間の変化だけでは足りない、さらに細かく変化させたいという場合もあるだろう。

 この場合は少々面倒な手順が必要になる。

 まずはパラメータを変化させたいポイントでクリップを分割。分割後のクリップをA、BとするとAのアウト点でのパラメータをBのイン点のパラメータと同じにするという作業を行なうことになる。

 両者のパラメータを同じにするのは調整項目が増えるとさらに面倒な作業になるが、幸いなことにユーザー設定はプリセットとして保存が可能である。
 Aのアウト点でのパラメータを保存、Bの設定画面のイン点でそれをロードすればよいのである。

 さらに細かい変化をつけるならこの手順を繰り返せばよいだけである。
 より高機能なソフト(つまり高価なソフト)ではキーフレームを使いより簡単にパラメータの変化が実現できるが、機能の限られた低価格なソフトでもある程度の手間はかかるものの工夫次第で同じ効果が得られる余地があるというのはありがたいものである。

 なお、ビデオFXの設定ウィンドウ再呼び出しはタイムライン上のクリップの右端に表示される「FX」と書かれたアイコンで行える。

■パン&クロップ

 ピクチャインピクチャ(以下PinP)に代表される動画のモーション効果もビデオ編集で一度は試してみたい効果の1つだろう。

 1万円台のソフトでは制限が多くあまり使いでのないPinPだが、Movie Studioなら比較的少ない労力で見栄えのいい結果が得られる。

 これを実現する機能は「パン&クロップ」と名づけられている。

 設定はビデオFXの設定ウィンドウと共通。
 「パン&クロップ」タブで表示を切り替えればよい。

 これもクリップ単位での適用となる。 設定方法はさほど難しくないのだが、表示はちょっと独特だ。
 ウィンドウにはクリップの映像が点線の枠とともに表示され、中央のハンドルで移動、上下左右および四隅のハンドルで拡大縮小や回転が可能である。

 しかし、ここでリサイズされるのは映像クリップに対するフレーム、すなわち画面の枠なのである。
 点線枠を縮小すれば、再生時にはクリップは相対的に大きく表示される。右に回転させれば、再生映像は左に傾くといった具合である。

 点線枠の中央に「F」と書かれているのはそういうわけなのだ。
 まあ、これは慣れればすぐに解決できる問題ではある。

 こちらもイン点とアウト点で異なる位置、拡大率を指定することで、時間的な変化を生み出すことが可能だ。
 小さな窓が、回転、拡大しながらフレームインするといった効果は思いのほか簡単にできる。

 より複雑な動き、たとえば、途中で移動方向を変えるといった動きにするためには、ビデオFX同様、クリップの分割、プリセットの利用という方法をとることになる。

 ただ、トランジションやビデオFXにも動きを伴った効果がいくつか用意されているので、これらを使った方がイメージに合った効果が簡単に得られるという場合も多いだろう。

 また、3トラックまでの合成が可能というメリットを生かして、メイン画像に2つの異なる小窓をインサートできる点を存分に楽しんでほしい。

 ニュース番組などでは、スタジオ映像に重ねて、2個所の中継地の映像を入れ込むこともあるが、Movie Studioならこれも可能である。

 複数のカメラで撮った映像をPinPで組み合わせるのも目新しい印象を与えるだろう。この場合の複数映像の同期が簡単にできることは前回お伝えしたとおりだ。

 さて、このパン&クロップ。
 なかなか使いでのある機能なのだが、残念なことに小窓側の映像に境界線をつけることができない。
 重ね合わせる2つの映像が似たような色味の場合は、いまひとつ境目がわかりにくく、視認性がよくないのである。

 単色背景の画像を使って小窓側の映像の下に敷くという方法が考えられる(位置やサイズはプリセットを流用して微調整する)が、これでは余分にトラックを消費してしまう。

 どちらか一方をビデオFXで明るさやコントラストを変えて、それにより色味の違いを明確にするという方法も試したが、オリジナルの色味と変わってしまうのも「なんだかなあ」という感じである。
 また、「ピクチャインピクチャ」というFXもあったが、どうも目的には合致しない。

 と思い探しているとその名もずばり「境界」というFXがあった。
 これのプリセットである「ベベル」を使ったところバッチリの結果となった。
 単なる境界線ではなく、小窓側が立体的にせりだしたような効果が秀逸である。

 1つの機能では思い通りの効果が得られなくても、複数の機能を組み合わせればよい。

 こうして望みの効果が得られたときの達成感はまた格別である。

 もちろん素材によっては、1つの機能で問題はないことも多いのだが、機能の不足分は使う人間の工夫でカバーするというのもPCのユーザーの楽しみの1つだろう。
 そんな試行錯誤を可能にする懐の深さもMovie Studioのよいところである。

 メインだけでなくどのビデオトラックにもトランジションをはじめとするこれらの効果が適用できるという点もありがたく感じるはずだ。