#4 ソニーのスゴ録を使ってみる

 現在最も人気集めているDVDレコーダーがソニーのスゴ録シリーズである。

 G-GUIDEを用いたEPGや「おまかせまる録」機能、低価格ながら大容量のHDDを搭載するなど、DVDレコーダーを初めて買うという人にとってはわかりやすいセールスポイントが目白押しで、確かに売れるだろうなあ、と思わせられる。
 それらのセールスポイントをわかりやすく紹介したCMも購買意欲をそそるものだろう。

 そして、実機を使ってみると、やはりその操作はわかりやすく、多くのユーザーは満足しそうだなあ、と感じた。なるほどよくできているのである。
 しかし、使い込むうちに不満が出てくるのではないかという気も同時にした。
 とくにDVD作成や編集機能の貧弱さが目立つのである。

 これをPCとの連携で解消できないか、というのが今回のテーマである。
 使用したモデルは250GバイトのHDDを搭載したハイブリッドレコーダーのRDR-HX10である。

 いつものようにDVD-RW採用の他社製品でも応用がきくように進めていきたい。

■DVDで残すには役者不足?

 本連載のゴールは、DVDメディアに録画番組を残すことにある。
 もう少し詳しく言うと、DVDレコーダーで録画、そのデータをPCに移し、PCでオーサリングすることで見栄えのよいメニューを持ったDVDをなるべく手間をかけずに作りたいということである。
 メディアとしては安価で再生互換性の高いDVD-Rを選択している。

 DVDレコーダーが作成してくれるメニューの出来がよければPCを使わなくても済むはずだ。

 しかし、スゴ録で作成できるメニューは番組タイトルのリストだけといういささかそっけないものだ。
 他社製のレコーダーではサムネイルを利用したメニューを作成するものが当たり前になっていることもあり、スゴ録のメニューは見劣りがしてしまう。
 ここはやはりPCの出番ということになるだろう。

 次にメニューが不要のDVDが作りたい場合。
 たとえば、映画一本をそのままDVDに残したいというのなら、スゴ録でも問題はない。
 映画の最初から最後まで通しで見ることがほとんどだろうから、6分毎、15分毎のいずれかが選択できるスゴ録の自動チャプターマーク機能でことが足りるはずだ。

 しかし、曲ごとにインデックスをつけたい音楽番組などではこれでは役に立たない。

 スゴ録で手動でチャプターが設定できるのは、HDDに録画したタイトル、VRモードのDVD-RWに録画したタイトルのみとなっている。
 HDDからDVDにダビングした場合はチャプターは引き継がれない仕様となっているので、DVD-R作成の場合もチャプターは自動に頼るしかない。
 手動チャプター設定が必要なら、VRモードのDVD-RWで設定しなおすという手もある(HDDからのダビングでは引き継がれないため)が、前述のとおり、価格や再生互換性の問題もあるので、やはりDVD-Rの方が望ましい。

 ここでもまたPCに登場してもらわなければならないのである。

 スゴ録は簡単に録画予約ができ、録画した番組はいつでも見られる、消せるという点では使いやすいのだが、DVDに残すとなると機能の不足が目立つ。
 他社製品と比較すると2世代前といった具合なのである。2パスVBRでのコピーという利点もあるが、時間をかけないという目的からは外れてしまう。

■PCへのデータ移動

 スゴ録は多くのメディアへの対応も特徴の1つだ。

 DVD-R、DVD-RW、DVD+RWの3種類が利用可能で、DVD-RWの場合はビデオモードとVRモードが選択できる。

 PCへのデータ移動には何を利用すべきだろうか? 

 利用するオーサリングソフトの機能も考えなければならないのだが、ここではチャプターの手動設定ができるほか、プレイリストの作成やファイナライズ後のタイトル追加も可能なDVD-RWのVRモードを選んだ。
 ある程度の編集はレコーダー側で行いたいという要望にはVRモードがベストだろうというもくろみである。

 とはいえ、DVD-RWのVRモードはPCとの連携に少々面倒なことがある。
 VRモードで記録されたDVD-RWはPCのエクスプローラでは中身を見ることができないのだ。

 これはUDFドライバと呼ばれるソフトウェアの問題である。
 Windows 2000/XPは標準でUDFをサポートするが、DVDレコーダーで使われるフォーマットには対応していない。
 DVD-RAMはドライブ付属のドライバをインストールすればでエクスプローラからディスク内のファイルが参照ができるが、VRモードのDVD-RWではそうはいかない。「アクセスできません」という警告が出てしまうのだ。通常、DVD-RWドライブでDVDライティングソフトを使って書き込む場合はこうしたドライバの存在を意識することはない。

 しかし、VRモードのDVD-RWの読み込みには別途UDFドライバの導入が必要になる。

 連載第1回で紹介したユーリードDVD MovieWriter Advanceおよびその後継製品となるDVD MovieWriter 3は、独自のUDFドライバを内包することで、VRモードのDVD-RWからのタイトルインポートを可能にしている。
 このドライバはシステムにインストールされるわけではないので、エクスプローラからファイルが見られるようにはならないが、DVDメディアからのインポートという目的は果たせる。

 一方、前回紹介したTMPGEnc DVD Author(以下TDA)もVR対応ではあるものの、エクスプローラでファイルが認識できるメディアでないと、インポートは不可である。
 VRインポートはDVD-RAMのみ、DVD-RWは正式対応しないとなっている。こうしたソフトはほかにもあるようだ。これをなんとか解決してみよう。

 VRモードのDVD-RWの読み取りにはVOB社のInstantReadを使うのが長く定番とされてきた。
 これは同社のInstant CD+DVDを使ってパケットライトソフトで書かれたディスクを、Instant CD+DVDがインストールされていない環境で読み取れるようにするために配布されているもので、サポートはないものの無償で入手可能だ。
 国内ではプロトン ソフトボート事業部のサイト(http://www.proton.co.jp/support/personal/download/icdread.html)で入手できる。

 InstantReadの導入によりエクスプローラからの参照が可能になり、TDAのVRインポートも利用できるようになる。
 しかし、落とし穴はあるもので、4Gバイト以上記録したメディアの読み込みができないという欠点がある。

 2時間番組をSPモードで記録すると、ほぼディスクいっぱいになってしまう。こうなるとInstantReadでは手に負えないのである。

 次に試したのがWinCDRでおなじみのアプリックスのPacketManリーダーである。こちらは同社のパケットライトソフトのPacketManで記録したディスクを読めるようにするドライバだ。アプリックスのサイトにて無償配布が行われている(http://www.aplix.co.jp/cdr/products/upgrade/index.html)。

 PacketManリーダーは4Gバイト以上記録されたメディアも問題なくエクスプローラで参照が可能になった。

 ここまでくれば話は簡単で、本連載でこれまで紹介してきた手法で、PCを使ったオーサリングが可能になる。
 たとえば、TDAならレコーダー側で設定したチャプターを引き継いだ状態でDVDの作成ができるわけだ。

 もちろん、メニュー画面を見栄えよくしたいという要望も十分にかなえられる。
 また、VRインポートに対応していないソフトでも、ドルビーデジタル音声のインポートに対応したソフトなら、タイトルごとにコピーし、拡張子VROをMPGに変更してオーサリングソフトに読み込ませるという手段もある。

 UDFドライバの導入が面倒、編集作業はPCですべてやる、というのであれば、PCへの移動にビデオモードでのダビングを使うという手もある。オーサリングソフトの機能や、自分の好きなやり方に合わせてメディアを選んでもよいだろう。

■スゴ録の編集機能の限界

 スゴ録でDVD-Rを作成する際の制限として、任意の位置にチャプターが打てないことは前述した。
 これ以外にもなんとかならないかなあ、と思うところはある。

 まずはタイトルの分割ができない点である。

 たとえば、DVDに約2時間収録可能なSPモードで4時間の番組を録画したとしよう。この番組をDVDに収めるには再エンコードによる「録画モード変換ダビング」を行うしかない。
 当然、これでは画質は劣化してしまう。
 メディア2枚に分けて高速ダビング(劣化なし)ができればよいのだが、それはかなわないのである。
 まあ、4時間番組なら、CMカットをすればそれなりに見られる画質で残せる。

 問題はより長時間の番組である。
 たとえば9時間のドラマなら、予約時にCMで途切れるであろう部分を見越して設定するしかない。
 当然、それは無理だから、手動で録画開始、DVDに収まる時間で停止、再度録画開始とするしかないのである。

 ウリであるところのEPGもこの仕様の前には魅力半減である。

 プレイリストがハードディスク内では作成できないのも残念だ。
 編集はA-B間削除しかないので、位置指定を失敗した場合は元に戻せないのである。

 プレイリスト編集で必要な部分だけをピックアップして、DVDにコピーという編集方法は、DVD-RAMレコーダーでは当たり前ともいえるもの。特に東芝のレコーダー(RDシリーズ)では推奨されている方法だ。
 これができれば、HDDに録画した番組から必要な部分だけをDVDに残す作業は、より便利になるのだが。

 確かにA-B間削除は概念的にわかりやすいが、メディアによってできる編集が異なるという方がわかりにくいと感じる。

 こうした仕様は、残念ながらPCとの連携でも解決できない問題である。

 DVDに残すことを最終的な目標とするなら、DVDレコーダーの編集・ダビング周りの機能をよく吟味しなくてはならない、PCでカバーできる範囲には限界がある、というのが今回の結論である。

 タイムシフト視聴が目的であれば、スゴ録はベストに近い便利さなのだが、目的が異なればベストにはならない、というわけだ。