#5 DVD-MovieAlbum 4

 DVD-MovieAlbum(以下DMA)がバージョンアップした。本連載第2回で紹介した、VRフォーマットで記録したDVD-RAMの編集・再生ソフトである。DVD-RAMレコーダーのユーザーには必携のソフトとして紹介したが、不満な点も残ったのは確か。最新バージョンのDVD-MovieAlbum SE 4はどれだけ改善されているだろうか? 筆者自身も長く愛用しているだけにチェックにも気合を入れて臨んだ。さて、その結果はいかに?

■概要

 DMAはあいかわらずドライブへのバンドルのみとなっており、単体での入手方法は現在のところない。今回は松下電器産業の最新DVDマルチドライブにバンドルされたものをテストした。前バージョンからのアップグレードについては記事作成時点で詳細は不明だが、5月下旬よりアップグレード受け付け予定というアナウンスが松下電器産業のWebに掲載されている。DMAはDVD-RAMレコーダー推進のために重要な位置を担っているのだから、前バージョン登録ユーザーへの通知はしっかりやってもらいたいと思うし、サードパーティ製ドライブへのバンドルも多いのだから、そうしたユーザーへの配慮もしっかりしてもらいたい。DMAがあるから松下製レコーダー(あるいは他社製DVD-RAMレコーダー)を買うということもあると思うのだが。
 それはさておき、DMA4である。主な変更点は以下のとおり。

・ファイルへの画像切り出し機能の強化
・ハードディスクモードの追加
・編集機能の強化
・ファイルからの画像取り込み機能の強化
・静止画モードの追加

 このほかにも多くの機能追加がなされているが、DVDレコーダーで録画、PCでなるべく手間をかけずに見栄えのよいDVDをオーサリングするという本連載の目的に沿った内容をメインに紹介していくことにしよう。

■ドルビーデジタルでの切り出しに対応

 ファイルへの画像切り出しというのは、DVD-RAMに記録された映像をPCのハードディスクにコピーする機能である。従来バージョンでは映像は無劣化でコピーされたが、音声はMPEGオーディオに変換されてしまっていた。記録時の音声フォーマットがリニアPCMでもドルビーデジタルであっても、常にMPEGオーディオになっていたわけである。DMA 4ではようやくMPEGオーディオに加え、ドルビーデジタル、リニアPCMでの取り込みも可能になった。
 前回DMAを取り上げた際に、MPEGオーディオへの変換における音質の低下はあまり気にならないという結論を出した。しかし、DVDビデオの規格から外れてしまう(MPEGオーディオはオプション扱い)ということを気にする人は思いのほか多いらしく、そうしたユーザーにとっては今回のドルビーデジタル対応は歓迎されるだろう。
 ただし、このドルビーデジタル対応、手放しで喜ぶわけにはいけないのが実情である。というのも、このドルビーデジタルでの切り出しは音声の再エンコードを伴うのだ。元の音声フォーマットによらず、「切り出しモード」の「音声」でドルビーデジタルを選択した場合、ビットレートは256kbpsで取り込まれるのである。音質の劣化は今回も気にならないレベルと感じたが、オリジナルのタイトルの音声が192kbpsの場合、コピーしたデータは容量が増加してしまう。メディアいっぱいに録画した場合は、PCに持ってきた時点で1枚のDVD-Rに収まらなくなるという可能性もあるわけだ。
 こうしたことが気になるならば、従来どおり、DMA付属のVRCopy(コピーツール)を併用することになるだろう。相変わらず、複数タイトルの一括コピーはできない(複数を選ぶと1つのVROファイルになってしまう)ので、相変わらず1つ1つ作業していくしかないのが残念だが、音声も変換なしで取り込みたいなら、これを使うしかない。

■バックアップデータもローカルで編集

 ハードディスクモードの搭載は一部のユーザーにとってはたいへんありがたいものだろう。この機能は、DVD-RAMに対して行っていた編集を、前述のVRCopyでPCのハードディスクにコピーしたデータに対しても同様に行えるようになる機能である。
 DVDレコーダーのハードディスク容量が足りなくなった場合、VRCopyを使ってとりあえずDVD-RAM経由でPCにバックアップするという手段がとれる。これならDVD-RAMメディアが1枚だけでも、DVDレコーダーの空きを増やすことは可能になるわけだ。しかし、そのバックアップデータから必要な部分だけを切り出したい、となるとPCにバックアップしたデータを再度DVD-RAMに書き戻すという作業が必要だった。これが、DMA 4ではこうした手間は不要となった。
 使用方法は簡単で、環境設定のドライブで、バックアップデータが入ってたフォルダを指定するだけである。フォルダの変更は画面上にハードディスクモード時のみ専用のボタンが現れるので、面倒はない。
 ハードディスクモードには、ハードディスクからの画像取り込み、タイトル消去および全消去、タイトルのチャプター消去などの一部の機能が使えないという制限があるが、一部のタイトルを別のファイルに切り出すことに関しては問題ない。必要な部分だけを切り出したら、あとはバックアップのフォルダごと削除してしまえばよいというのはかなり便利である。
 従来バージョンでバックアップしたデータについても、問題なくハードディスクモードが利用できるのもありがたい。VRCopy自体は前バージョンのVer. 3.xとその前の2.7xで互換性がない(Ver.2.7xでバックアップしたデータをVer.3でDVD-RAMに戻せない)という問題があったが、DMA 4ではそうしたことも解消されたようだ。

■編集機能の強化

 DMA 4では従来バージョンからいくつか名称の変更がなされている。たとえば、プログラムはタイトルに、マーカ挿入はチャプター作成に、といった具合である。これはDIGAの最新機種での機能および名称変更に即したものだという。今回、DIGAの最新機種の試用ができなかったので、その整合性についてはわからないのだが、DMA 4を使う限りでは利便性は確実に向上していることが実感できた。
 従来のDMAのマーカは一見すると他のレコーダーでいうチャプターポイントに似たものだったのだが、あくまでもスキップ時の頭出しのためのしおりとしてしか機能しないものだった。また、CMカットしたい場合は、タイトルの分割と消去、結合を何度も繰り返す必要があり、編集の効率は決してよいとはいえなかったのである。
 しかし、DMA 4で導入されたチャプター機能は、編集したい部分を区間として指定できるものに変更されている。CMの頭と最後にチャプターを指定しておき、あとはチャプター消去ボタンで簡単にCM部分だけを消せるようになった。これまでレコーダー側で行っていた編集を、スライダーで頭出しできるDMA 4に移行する気にもなるというものである。
 頭出しに関してはさらに機能追加がなされている。現在位置の前後数秒間を約0.5秒単位(すなわちGOP単位)でサムネイル表示する「ステップサーチ機能」がそれだ。コマ送りよりも楽に映像の切り替わる位置が見つけられる。
 細かいところでは、結合、消去、プロテクト設定、並び替えといった編集を、複数タイトルに対して行えるようになったのもうれしい。とくに従来の結合機能は、隣り合ったタイトル同士でしか行えなかったので、使い勝手はかなり向上したといえる。
 ただ、チャプター機能が導入されたわりには、プレイリストの作成ではチャプター単位での指定はできず、相変わらずイン点・アウト点指定で順番に範囲を指定していくしかない。実データに変更を加えないプレイリストは安心して編集ができるという利点があるので積極的に活用したいところだが、この操作性では手間が多すぎる。このあたりは東芝RDシリーズが採用しているチャプター単位での指定を可能にしてほしいと感じた。

■その他の機能

 本連載のテーマとは直接関係ないが、その他の追加機能にも触れておこう。
 ファイルからの画像取り込み機能の強化については、MPEG2ファイル、MODファイル(SD-Video Entertainment Profiloe形式で記録されたMPEG2ファイル)、PCM形式のWAVE、非圧縮TIFFが取り込み対象の形式として追加されている。従来バージョンでもMPEG2ファイルは取り込めたのだが、一部エンコーダが生成する拡張子がMTVの情報ファイルが必要であった(カノープスMTVシリーズやアイ・オー・データ機器のmAgicTVなどがファイル作成時にMTVファイルを同時に生成するオプションが用意されている)。DMA 4ではMTVファイルがなくても取り込みが可能となっている。すべてのMPEG2ファイルに対応というわけではないが、MTV1000で録画したデータ(MTVファイルなし)を取り込めることは確認できた。PCで録画したデータをDVD-RAM経由でTV画面で見たいという人には便利だろう。
 静止画モードの追加は、DVD-RAMに記録されたDCF準拠の静止画ファイルのサムネイル表示、再生を行うモード。デジカメ用メモリカードからの静止画取り込みに対応したDIGAの関連製品ならではの機能だ。
 これ以外にも、DV-AVIファイルの取り込み時に記録日時の変化点を検出してチャプターを作成する機能や、チャプター名として録画日時表示が可能になるといった機能追加がなされている。
 今回のバージョンアップは、ドルビーデジタル対応、ハードディスクモードの追加など、ユーザーの声を素直に反映したものといえそうだ。DVDオーサリングソフトの多くはドルビーデジタルにすでに対応済みであり、DMAの対応はちょっと遅かった気もするが、DMAを使い込んでいる人ほど、これらの機能追加をうれしく思うだろう。一部不満点は残るものの、メジャーバージョンアップにふさわしい内容であることに違いはない。
 なお、近頃話題のデジタル放送の「1回だけ録画可能」番組の録画したDVD-RAMだが、本製品では扱うことができないそうだ(再生、編集いずれも不可)。従来どおりDVDレコーダー側で対処するしかない。