#1 DVDレコーダーの映像をPCに転送~もっとカッコイイDVDビデオを作る

■目的と必要なもの~なぜPCでやるのか?

  20003年を代表する家電の1つとして注目され、急速な普及を果たしたのがDVDレコーダーである。

 単に個人的なビデオライブラリを作るだけでなく、録画番組をDVD-Rに記録することでDVDプレイヤーさえあれば誰でも見られるDVDメディアが作れるというのがウリの1つである。
 しかもそのメディアに記録された映像は高画質でVHSテープのように再生するたびに劣化することはない(メディアの寿命は別問題として)。

 DVDレコーダーのユーザーの中には、DVD-Rの作成にPCを併用している人が意外と多い。
 それがレコーダーだけでも可能な作業なのにもかかわらず、である。

 そこにはPCでなければできないことが存在する。
 それを説明する前にDVDレコーダーの特徴をおさらいしておこう。

 DVDレコーダーには、DVD単体レコーダーと、ハードディスクも内蔵したハイブリッドレコーダーの2種類がある。

 DVDのみでは4.7Gバイトという容量の制限から収録時間が短く、また、より長く録画しようとすると画質も落とさざるを得ない。
 ハイブリッドレコーダーであればハードディスクの容量の制限はあるものの、DVDに比べれば高画質、長時間の録画ができるし、CMカットなどの編集を施したうえで必要な部分だけをDVDに保存することも可能になる。

 さらに複数の録画番組から好きなシーンだけを集めたDVDを作るという作業も同じように画質劣化なくできるのも利点であろう。

 一方、DVD単体レコーダーではメディア間のコピーは物理的に無理なので、ビデオコレクション的なDVDは作成しにくいのが難点である。

■PCを使う意義

 さて、現在発売されているDVDレコーダーは、前述のとおりいずれもDVD-Rの作成が可能だ。

 多数の録画番組の中から残したいものだけを選んでDVDにダビングするのが作業の基本で、簡単ではあるがメニューもつけられる。
 ただし、メニューはサムネイルこそあるが、かなりさびしいものだ。
 とくに何枚ものDVD-Rを作ってくるとそのデザインには飽きがくる。

 機種によっては背景の色が変えられるものもあるが大枠はいっしょ。
 しまいにはDVDレコーダーのことを何も知らない友人・家族に「そんな高い機材なのに市販のDVDみたいなメニューは作れないの?」と言われてむかついた経験がある方もいるかもしれない。

 東芝のRDシリーズのようにPCからビットマップ画像を転送したり、録画番組の1シーンを背景にできれば、かなり見栄えも変わり、ぐっとそれらしい仕上がりになる。
 とはいえ、かっこいいメニューが作りたいという理由だけで、レコーダーを買い換える人もいないだろう。

 そこで活用されるのがPCである。
 作業手順は図1を見てほしい。
 これでDVDレコーダーよりも見栄えのよいメニューを持ったDVD-Rが作成できる。

 ただ、見栄えのよいメニューといっても、サムネイルと番組名があれば十分な場合が多いだろう。
 背景をオリジナルの画像に変えればオリジナリティは十分出せるし、アニメーションをちょっと使っただけでも、視聴者は驚いてくれるはずだ。

 また、PCの利用はDVD単体レコーダーにも福音となる。
 複数メディアから番組を集めて1枚を仕上げることもPCを使えば簡単にできるのである。

■もっとカッコイイDVDビデオを作りたい

 さて、前置きが長くなってしまったが、改めて本記事の趣旨を簡単に説明すると「もっとカッコイイDVDビデオを作る」、というタイトルのまんまになる。

 さらに言えば、DVDレコーダーだけではできない、カッコイイ、自慢できるメニューを、PCを使っていかに作るかということである。
 そして、手間や時間をかけずに、というテーマも付け加えたい。

 あまり一般的な話になり過ぎて、食い足りない、わかりにくい記事になるのもなんなので、本連載では毎回機材やソフトの組み合わせをある程度決め打ちして、手順を紹介していくことにする。

 ただ、一方で今度は、取り上げたレコーダーのユーザー以外はおもしろくないだろうから、他機種でも活用できるような情報は随時盛り込んでいくつもりだ。

 レコーダー以外の必要な機材についてはある程度共通する部分もあるので先に触れておこう。

 PCに加えて追加投資が必要なのは、書き込み型DVDドライブと、オーサリングソフトだ。

 書き込み方DVDドライブにもいくつか種類があるが、これは手持ちのDVDレコーダーのメディアが使えるものを選択するというのが絶対条件である。
 松下、東芝のレコーダーならDVD-RAM対応のドライブ、パイオニアやソニーならDVD-RW対応ドライブといった具合である。

 当然、ドライブ側のDVD-Rへの対応も必須だが、現在では未対応ドライブはないので気にする必要はない。
 DVDマルチドライブなら基本的にレコーダーがなんであっても対応が可能になる。

 オーサリングソフトは毎回異なる製品を取り上げる予定だ。

■使用する機材と注意点~ソフト選択について

 第1回はレコーダーが松下電器産業のDIGA DMR-E200H、オーサリングソフトはユーリードのDVD Movie Writer Advance(以下DMWA)である。

 DVDレコーダーに関しては、同じDVD-RAMを採用した東芝RDシリーズでも以下に述べる方法で、同様に作業できるはずだ。

 オーサリングソフトの選択は重要である。
 現在、オーサリングソフトにはプロ用から1万円以下のパッケージまで、数多くの製品が存在する。
 本記事でターゲットにするのは基本的に2万円以下の低価格製品である。

 この中にあって、DMWAは最も汎用的に使えるソフトだと思われる(写真参照)。

 そして最も重要な点として、DVD-RAM、DVD-RWに対応したDVDメディアからのデータ取り込み機能が備えられている。
 ほかのオーサリングソフトでは別ソフトを組み合わせなければならないことを考えると、初心者には敷居が高い。

 だが、DMWAでは何も気にせずに楽に作業が行える。

 さらに、ドルビーデジタル対応というのも見逃せない機能である。
 DVDレコーダーは、音声をドルビーデジタルという圧縮音声フォーマットで記録している。

 DVDレコーダーから、DVDメディア経由で取り込んだ番組データを最後まで手をつけずに(つまり無劣化で)DVD-Rに仕上げるには、このドルビーデジタル対応が重要なのだ。

 一部のオーサリングソフトでは、DVD-R作成時にMPEG音声やPCMしか利用できないものもあるが、その場合は音声フォーマットの変換が必要となり、少なからず音質が劣化してしまう。
 出力はできても入力は不可、という製品も多いので注意したいところだ。

 ユーリードにはDMWAの姉妹製品としてDVD MovieWriter 2という製品がある。
 こちらもDVDメディアからの取り込み機能があるのだが、残念なことにドルビーデジタルで収録されたデータをオーサリング時にインポートすることができない。
 利用できるのはPCMで録画した番組のみなのである。ドルビーデジタルに対応させるためのプラグインはオプションでオンライン販売されているが、これから買うというのなら動画メニュー機能も追加されたDMWAのほうがよいだろう。

■再エンコードをどう考えるか

 TV番組のDVD-R化で最も悩まされるのが再エンコードの問題だ。

 せっかくDVDレコーダーできれいな画質でとれた映像を、PC側で再エンコードすることになっては画質も劣化するし、それにかかる時間も無駄である。

 DVD規格に沿ったデータならば、再エンコードしない、というのがDMWAのもう1つの重要なメリットなので、今回の組み合わせではあまり気にする必要はない。

 しかし、DVDレコーダーを使ったカット編集では不要なフレーム、いわゆるゴミが残ってしまう場合がある。
 このゴミを除くのはオーサリングソフトの編集機能には基本的に無理である。ここは数フレームはあきらめるか、レコーダのHDDからDVDへのダビング時に無劣化コピーではなく、レート変換ダビング(実時間ダビング)などの機能を使うしかない。

 再エンコードはPCよりもレコーダ側で行ったほうが、画質や速度の面で有利だ。

 最後にDVDレコーダ-PC間のデータの移動に使うメディアについても念のため触れておこう。
 作業においてはDVD-Rでもできないことはないのだが、DVD-RAM、DVD-RW(いずれもVRモード)を使うのが一般的である。
 というのも、いったんコピーが終われば消去して再度使えるし、記録後の編集も可能だからだ。
 データ移動のためにDVD-Rを無駄にすることはない。

■作業手順の詳細

 いよいよ実際の作業になるが、DMWAのユーザーインターフェイスがウィザードタイプなため、初心者でもあまり迷うことはないだろう。
 掲載した画面の順番に進めていけばよい。

 背景やBGMを加えるだけでも十分作品っぽく仕上がるのがわかるだろう。
 好きなフォントが使えるというのもPCならではである。

 もちろん、動画を使ったサムネイルなどの効果も抜群である。

 注意が必要なのは、DVDからの取り込み時にチャプターごとに個別のMPEGファイルとして、PCのハードディスクに取り込まれる点だろう。

 DMWAでは1ファイル、1タイトルとして扱われる。
 タイトル再生後の動作については、メニューに戻る、あるいは連続して次のタイトルを再生する、の2つの選択肢がある(ソフトではトラックという名称になっているが)。

 しかし、この動作に満足できない場合も出そうだ。
 というのもDVDプレイヤーによっては、スキップボタンでタイトル間の移動ができないものがあるので、すべて再生する場合は連続再生するのに、スキップボタンでは次のタイトルに移れないということになるからだ。

 1本の番組にすでにチャプターを打ってある場合は、すべてそれを削除してから取り込み、チャプター設定はDMWAでやるのが基本になるだろう。

 複数のファイルをつなげるには他のソフトを使うか、レコーダー側で再エンコードを行うしかない。

 DMWAにはここで紹介した機能のほかに、CMカットに便利な編集機能「ビデオの複数カット」というのがあるが、編集点で画像が乱れる場合があり、回避するには再エンコードとなるので本記事の趣旨にはそぐわない。

 メニューのデザイン面においてはプリセットのテンプレートで簡単にできる、というのがメリットなのだが、逆にサムネイルの配置の自由度はまったくないという点が気になるかもしれない。
 それがしたいとなると別のソフトを選ぶことになるが、それが可能なソフトは高額であったりするし、DMWAの手軽さも望めなくなってしまう。

 月に1枚程度なら凝ったデザインのDVD作成も可能だが、がんがん録画してDVDを量産し始めると逆にDMWAのありがたさがわかってくる、ということもいえる。
 たくさん作りたい人ほど、DMWAが向いているというのが今回の結論である。