#1 オリジナルBGMを作ろう

オリジナルBGMを作ろう
 

 映像をより印象的に、より効果的に見せるのに不可欠な要素の1つが、BGMだ。使う音楽によって同じ映像でも受けるイメージが違ってくるのはもちろんのこと、単に音楽がついているだけで全体のクォリティがぐっとアップする。イメージに合ったBGMをぜひともつけておきたいものだ。
 BGMをつける方法はいくつかあるが、もっとも手軽なのは、手持ちのCDから気に入った曲を抜き出したり、著作権フリーの素材集を使うことだろう。しかしコンテストに応募することが目的なら、前者は著作権の問題で使えないし、素材集の場合はまったく同じ曲をほかの人が使っている可能性もある。また自動作曲ソフトもいくつかあるが、必ずしもイメージに合った曲が作れるとは限らない。そうなると、オリジナルのBGMを自作するのがやはりベストだろう。

簡単に作曲ができるループソフト

  オリジナル曲を作るにも様々な方法がある。シーケンサでMIDIデータを作る方法もあるし、昔ながらのMTRと同じように、ハードディスクレコーディング(HDR)でギター、ベースなどを録音して重ねる方法もある。しかしMIDIデータを作るにはMIDIや楽器の知識がそれなりに必要だし、実際の演奏を録音するHDRなら楽器が演奏できなくてはどうしようもない。
 そこでおすすめするのが、ループソフトと呼ばれるタイプの音楽制作ソフトだ。これは、あらかじめ楽器の演奏を、フレーズやパターンといった単位で録音したオーディオファイル(サンプルと呼ばれる)を使い、これをループ、つまり繰り返し再生することで、曲を組み立てていく。これはヒップホップなどのジャンルでは今や世界中で当然のように使われている手法で、たとえばちょうど1小節分の長さのドラムパターンを8回ループ再生して、8小節のドラムパターンを作る、というやり方だ。同様にベースやギターなどのパートを重ねていけば、簡単に曲を作れるのである。
 ループソフトの最大の特徴は、サンプルのテンポやキー(音程)を自動的に調整してくれるところだ。サンプルのテンポやキー(音程)が一致していないと、ギタリスト、ベーシストがそれぞれ別の曲を同時に演奏するようなもので、音楽として成り立たない。シーケンスソフトやHDRソフトの場合は、これらを合わせるための処理を自分でいちいちやらなければならないが、ループソフトならサンプルのテンポやキーを気にする必要はない。どんなサンプルでも使える。スローテンポの曲のドラムをアップテンポで使うこともできるし、もともとは違うキーのベースとギターを同じキーにして一緒に鳴らすこともできる。とにかくカッコいいパターンを見つけたら放り込んでいく。あとはソフトが曲にしてくれるのである。
 曲中あるいは曲全体のテンポやキーも簡単に変えられる。このことは映像のBGMを作る上で大きなメリットとなる。テンポを変えられるということは、曲全体の長さを自在に変えられるということだからだ。たとえば使いたいBGMが映像よりほんの少しだけ長かった場合は、曲のテンポをちょっと速くするだけで長さを合わせられる。こういった、いわゆる尺合わせが簡単にできるのも、ループソフトならではだ。
 ループソフトのもう1つのメリットは、自分でフレーズを組み立てる必要がないということだ。適当にサンプルを選んでループさせてもある程度形になるし、違うジャンルのサンプルなど意外な組み合わせから面白い曲が生まれることもある。あらかじめ曲のイメージや構成を考えておかなくてもよいわけだ。楽器の知識も経験も、録音機材やMIDI音源すら不要、まさに初心者にうってつけなのがループソフトなのだ。

ループでBGMを作るのに必要なもの

 

 ループを使ってBGMを作るのに必要なものは、それほど多くない。ループソフト、素材となるサンプルだけで、あとはPCにオーディオ機能があれば、すぐにループを使って曲作りを始められる。
 ループソフトでは、Windows用としてはACID、SONAR、Cakewalkシリーズが有名だ。また国産シーケンスソフトのSinger Song WriterやDJソフトのような操作性を持つLIVEもサンプルのループに対応している。またMacintoshにもアップルのAudiotrackがある。これらのソフトの詳細は、機会を改めて紹介することにする。
 これらのループソフトには、数多くのサンプルが付属しているので、そのままでもすぐに作曲を始められる。これで足りなければ、市販されているループソフト用のサンプルを利用することもできる。市販のサンプルもこのところ種類が増えてきており、ジャンル別、楽器別など様々なライブラリがあるので、必要に応じてそろえていくとよいだろう。
 PCのオーディオ機能については、基本的にはオーディオの再生ができればよい。外部機器と接続する必要もないので、デジタル入出力も不要だ。とはいえ、せっかくオリジナル曲を作るのだから、できるだけよい音で作りたいものだ。そのためには細かい部分まで聞き分けられる、音質のよいオーディオインターフェイスがあるとよいだろう。比較的低価格ながら音質のよいUSB接続のオーディオインターフェイスが最適だろう。

 

ACID Pro 4

 

テンポ、キーの自動調整機能を初めて搭載したループソフトの草分け的存在。歴史があるだけに完成度も高く、マニュアルを見なくても直感的に使えるインターフェイスは秀逸だ。テンポ、キーだけでなく拍子も自由に設定でき、変拍子などの特殊な楽曲も作成可能、数多くのエフェクトが用意され、MIDIデータも扱えるなど、高度な曲作りにも対応しており、プロのユーザーが多いのもうなずける内容だ。

SONAR
 

シーケンスソフトの老舗、Cakewalkシリーズのフラッグシップであるだけに、MIDI入力、編集機能はトップクラス、さらにオーディオトラックでループが使える。ループによるオーディオとMIDIで作ったトラックを組み合わせて使うのに適している。Cakewalkシリーズにはほかにいくつもの製品があるが、いずれもループに関する機能はSONARとほぼ同じように使える。

Soundtrack
 

Soundtrackは従来Final Cut Proにバンドルされていた音楽制作ソフトだが、今年8月から単体発売された。独自の検索エンジンにより、ジャンル、ムードといったキーワードでサンプルを探すことができるのはユニークだ。アップル製、および世界的に有名なシーケンスソフトLogicのメーカーであるEmagic製のエフェクトが30種類以上も付属している。